1日50文字で物語する

うそとほんととうそのはなし

グレー・スケール オープニングあるいはボクはここで待つ

ボクは、ぼんやりと時を過ごしている。
見えるのは砂とその奥の街の残骸。もしかしたらその街の名残は蜃気楼かもしれないけれど、ボクに確かめる術はない。


人間は、人間であることをやめたんだと思う。


そんなこともボクが「そう思う」だけで根拠はない。ボク自身も「人がひとだった」と感じる時代を生きたことはないんだから、分かりようがないのだ。
人が文明を手放してからどれくらい経つだろう。
もしかしたら、ボクが知らないだけで文明が残るエリアもあるのかもしれない。それも、ボクも知ることはない。知ることがない以上、存在しないのと一緒だ。
人が人と一緒にいることをやめた。繰り返された戦争でそもそも人口が減り続けた世界はある一つの結論を出した。人は、人と生きるからいけないのだ。
もちろん、人がたった一人で生きていくのは難しい。だけど、極力、人と関わらないように。最小限の小さなコミュニティで生きていくことを選んだ。奪い合ったり傷つけあったりしないように。それぞれが小さなコミュニティに分かれて、生活するようになった。



砂だけがずっとあるもので、そこで遠く太陽がのぼり月とかわりばんこで光を降り注ぐのをただ、見ている。
ボクはそこで、ぼんやりとした時間の中で過ごしてる。時々やってくる誰かが、その中で起こる「ちがうこと」だ。その誰か、もいつくるかはボクにはわかるはずもないんだけど。
ただ、何故かボクのもとにはお喋りな誰かが来ることが多い。それはたまたまそういうひとばかりが来るのか。それとも、ここに来るとみんなお喋りになってしまうのか。どちらかは分からないけれど、ボクはその話を聴くのが楽しみなんだ。


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そんな"ラジオくん"がお話を聴く話をいくつか書き、それに合わせた曲をMuseoが作ったアルバムが出ました



よろしければ。
音楽としても最高のアルバムです。