1日50文字で物語する

うそとほんととうそのはなし

アスターテイスト プロローグ

コーヒーの香りが、店の中に立ち込めている。立ち込めて、と言っても決して不快なわけじゃない。むしろ、ずっとここにいたいと思わされるような、そんな香り。迫り来るような香りではもちろんなくて、なんとなく居心地の良さを作り上げてくれている。 よくよ…

グレー・スケール オープニングあるいはボクはここで待つ

ボクは、ぼんやりと時を過ごしている。 見えるのは砂とその奥の街の残骸。もしかしたらその街の名残は蜃気楼かもしれないけれど、ボクに確かめる術はない。 人間は、人間であることをやめたんだと思う。 そんなこともボクが「そう思う」だけで根拠はない。ボ…

おなかすいた

自分で選んだはずのインスタントラーメンの味気なさを机に置いた瞬間思い知ったりする。食べる気がなくなりそうなことに目を背けながら鍋にお湯を入れる。どんぶりに入れた適当な水の量。それに冷蔵庫の中で萎びたキャベツを千切って入れる。 くつくつとお湯…

きみと旅する

携帯が発達して、写真というものは身近になったように思える。だけれど、データとして残すばかりで印刷して手元に残すことが減った結果むしろ遠ざかった。そうも思う。 だからこそ、自分は「旅行の記憶」は印刷するようにしている。実際に紙になるとこんなに…